SPECIAL
INTERVIEW

東京ミッドタウン日比谷 開業5周年記念
スペシャル対談
演出家 宮本 亞門 シンガーソングライター 平原 綾香

日本の文化を牽引する2人が
日比谷の街への思いを語る

2023年は、日比谷公園120周年、日比谷野外大音楽堂100周年など、日比谷にとっても特別な年。
その日比谷の文化に、表現のプロとしてだけでなく、プライベートでも触れてきた2人に、
街と東京ミッドタウン日比谷への思いを語っていただきました。

新しい文化が育まれていく街

宮本

僕は銀座で生まれて、若い時から日比谷にはよく来ています。街の印象として特に記憶に残っているのは、学生の時、今では信じられないくらい映画館や劇場の前に長い行列ができていて、ロードショーでは立ち見客がたくさんいた光景です。その熱狂に触れながら、ブロードウェイってこんな感じなのかなと思いを馳せていたのを覚えています。また、今は無くなってしまいましたが、日劇(日本劇場)が日本の文化や音楽を先導していて、それを覗き見ながら、大人って格好良い遊びをするんだなという憧れを感じていました。平原さんは日比谷の街にどんな印象を持っていますか。

平原

私は、デビューしてからは帝国劇場に仕事で来ることや、映画や観劇に訪れる機会が増えました。それ以前は家族ともよく訪れていて、父が銀座のライブハウスで演奏するのを観に行くこともあり、親しみのある界隈です。街には由緒正しいお店や華やかな場所があり、背筋が少し伸びるような感じと懐かしさが相まって、とても好きです。

宮本

プロとして日比谷で仕事をすることもまた特別な瞬間ですよね。自分にとって思い入れのある街で、その中でも聖地とも言える日生劇場ではたくさんの舞台を観てきただけに、初めて演出をした時は感激でしたね。1989年にミュージカル『エニシング・ゴーズ』を手掛けて、当時は日生劇場で最年少の演出家だったので、誰だあいつはという目で見られていたのですが、そんなことは気にならないくらい興奮して心血を注ぎました。私にとっての日比谷は、プライベートでの思い出や、演出家としての喜びを感じさせてくれるワクワク感の詰まった街です。

平原

日比谷を行き交う人々、特に劇場やお店などで働く人々が、街に誇りを持っているのを感じます。仕事や稽古の合間に街を歩くと、ただの気晴らしだけでなく、オシャレをして楽しみたい気持ちがわいてきます。日本の素敵な文化を感じる場所でもあるので、海外の友人が来日した時は案内したい場所でもありますね。

宮本

確かに、海外から友人や仕事仲間が来た時に、日比谷で作品を上演していると、「日本にもこんな場所があるんだね」ととても興奮してくれますね。彼らにとって劇場が集まる街は、ブロードウェイやウェスト・エンドのように文化の発信地で、時代をつくっていく場所という思いがあり、日比谷にもそれを感じてくれているのかなと思います。劇場や表現する場所が集まると、そこには競争が生まれて、洗練された本物志向の作品や新しいものが生まれてくる可能性が高まっていくと思います。
東京ミッドタウン日比谷が開業した2018年から続く『Hibiya Festival』は、ニューヨークのタイムズスクエアの賑わいや文化が発信される場所のイメージを東京ミッドタウン日比谷に重ねて、ビルの合間で様々な音楽や演劇、パフォーマンスが行われ、新しい熱気が生まれていく「街を劇場に」というコンセプトでスタートしました。日比谷のビジネスマンが足を止めて拍手をしてくれている様子を見ると、新しい日比谷の風景や文化が育まれていく可能性を感じています。しかし、くしくもコロナウイルスの影響で、劇場を始めとする様々な場所での表現が制限されることになり、多くの人が活動の場を失ってしまった。それで、次に始めたのが若い才能が活躍する場を広げるためのプロジェクト『あなたがNEXTアーティスト!』です。これからの時代をつくる才能を後押しするこのイベントの意義はより大きなものになっていると思います。

平原

表現する私達だけでなく、演劇や音楽を楽しみにしているお客様にとっても、フラストレーションがたまる日々が続いていたと思います。表現する場所や機会が無くなれば、色々な文化が無くなっていってしまうかもしれない。このプロジェクトでは、私も審査員としてお手伝いさせていただいていますが、私自身もまだまだチャレンジしていかなければいけないNEXTアーティストだと思っていますし、そういった場所を生み出してくれる宮本さんのような存在や、東京ミッドタウン日比谷という空間があることは有り難いですね。今は、プロやアマといった境界線が曖昧になっていて、動画サイトやSNSを通じて注目されるようになる人もいるし、誰にでもチャンスがある時代になっています。その中で、そんなあらゆるアーティスト達が集まれる場所になっていくと良いですね。

宮本

演劇やミュージカルを観る人々がたくさんいますが、残念ながら集える場所は日本には少ない。東京ミッドタウン日比谷を見た時、こんな集える素敵な広場があると興奮しました。多くの人がここで交流して、歌い踊り、生きていることを讃歌でき、希望を抱いてもらいたい。それに、これから頑張っていこうとしているアーティストには、あなた達の才能は素晴らしいものなんだよと伝えたいという思いを持って取り組んでいます。

愛着や誇りが街の魅力を
生み出していく

宮本

宝塚劇場から歩いてくる時の雰囲気も個人的には好きですね。ゆとりのある曲線的な道を歩いてると、まるでメロディーが街に溢れているみたいに、色んなお店や人々と溶け合い街の一部になって、心も軽やかになりますよね。

平原

東京ミッドタウン日比谷の中のお店もとても個性的で、行ってみたくなるところがたくさんあります。品のある雰囲気や、大きな窓から見える日比谷公園の緑もここにしかない風景の一つですよね。

宮本

東京ミッドタウン日比谷の人々が、日比谷に愛着を持っているというのも、街の雰囲気をつくる大切な要素だと思います。先程、タイムズスクエアと東京ミッドタウン日比谷を重ね合わせたという話をしましたが、I LOVE N.Y.というキーワードが示す通り、ニューヨークでは多くの人が周りの人の文化や行いを「いいね」と応援し支持する雰囲気があって、それが様々な表現やアーティストを後押しして盛り上げています。日比谷ではミュージカルや映画を始めとする多くのエンターテインメントが発信されていて、また、最先端の食やファッション、伝統的な文化が行き交っています。それらを日比谷の人々が尊重し合って、楽しんでいくことで、新しい日比谷らしさというものが生まれていくのではないでしょうか。

平原

宮本さんが言うように、これから東京ミッドタウン日比谷を中心に新しい文化が育まれていく中で、今の品があって素敵な雰囲気に、もっと色んな才能が入り込んでいって、より彩りが増えていくといいなと思います。由緒正しいもの、シックで大人な雰囲気、そして新しい出会いや華やかさが生まれていく、これからの日比谷がとても楽しみですね。

宮本

この辺りは明治時代に鹿鳴館がありました。長い間、鎖国をしていた日本に西洋から異なる文化が入ってきて、まさに日本の文化と融合して新しいものが次々と生まれていった場所です。東京ミッドタウン日比谷のように、映画館やレストラン、ファッションなど様々なものと、多くの人が集まる場所は次の時代の文化を生み出していく場所になる可能性を持っています。幼い僕が、劇場で様々な作品に触れ、憧れを抱いて、夢に向かって進んでいったように、東京ミッドタウン日比谷を中心とした日比谷の街全体が、たくさんの人々をワクワクさせる、新しい出会いのある劇場のようになっていってほしいですし、そのために私も協力していきたいです。

AMON MIYAMOTO

1958年、東京・銀座生まれ。ミュージカル、ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎など多彩なジャンルにおいて演出家として国内外で活躍。2018年、2019年には『Hibiya Festival』オープニングショー、さらに『あなたがNEXTアーティスト!』にプロデューサーとして関わる。

AYAKA HIRAHARA

2003年『Jupiter』でデビュー。歌手として様々な賞を受賞し高い評価を受ける他、ドラマやミュージカル、映画の吹き替えなど多方面で活動。2023年夏に帝国劇場『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』出演予定。

INFORMATION

Hibiya Festival
~街をあげた観劇フェスティバル~

4月28日(金)〜5月7日(日)

無料でミュージカル、日本舞踊、オペラ、ダンスなどのパフォーマンスステージを楽しめる祭典。選考で選ばれた16組のNEXT アーティストが、東京ミッドタウン日比谷の他、日比谷や銀座の街でパフォーマンス予定。

あなたがNEXTアーティスト!

エンターテインメントの街・日比谷から新たな才能を世界に発信することを目的に2021年から始動。

東京ミッドタウン日比谷 開業5周年記念
スペシャルインタビュー

モルソー
そばがみ
HIBIYA CENTRAL MARKET

東京ミッドタウン日比谷の大きな魅力を生み出している多彩なレストランやショップの数々。
新しい挑戦を続け、日比谷に潮流を生み出しているプロフェッショナルへ、
東京ミッドタウン日比谷の5周年への思いを聞きました。

Special Interview 01 morceau シェフ

――様々なお客様が親近感を感じる店づくり

2018年開業時、目黒にあった店舗から移転するにあたり、この場所に出店を決めた大きなポイントが、店内の大きな窓から見える景色です。厨房からも外を見ることができ、お客様の存在を近くに感じながら調理ができるオープンな雰囲気は魅力でした。季節と共に移り変わっていく日比谷公園の木々や、夕暮れ時の美しい眺めはこの店の個性の一つです。一方で、街中の小規模な店舗の時とは訪れるお客様の層が大きく変わるため、この店を象徴するような新しいメニューづくりにも取り組みました。今、提供しているオムレツやハンバーグは、その料理を目的にご来店いただくお客様の人気メニューになっています。東京ミッドタウン日比谷には、ビジネスやショッピング、観劇など様々な目的を持ったお客様がいて、その中で見つけて立ち寄ってもらい、またリピートしてもらえるよう、コミュニケーションを取って親近感を感じていただけるようなお店づくりを目指しています。

――館の雰囲気をつくるお店同士のつながり

東京ミッドタウン日比谷の特徴として、お店同士のつながりがあることも挙げられます。普段の挨拶はもちろん、例えば、調味料が足りなくなりそうな時に、隣のお店から借りるといった助け合いもあり、商業施設内のテナントですが、街の商店街のようなコミュニティが生まれていて、それが館全体の温かみのある雰囲気をつくっているのかもしれませんね。また、私は料理人としてだけでなく、オーナーとして経営面の仕事をする必要もあるのですが、そんな時には6階のQ CAFEのワーキングスペースを活用しています。集中してデスクワークをして、またお店での調理に戻っていく切り替えができる場所など、色んな過ごし方ができる場所があるのも東京ミッドタウン日比谷の魅力ですね。 日々の営業の中で、様々なお客様に楽しんでいただける料理やサービスを提供しながら、関係性を築くための努力を続けてきたことで、モルソーがこの土地や環境に馴染んできていると感じています。普通のお店は5年経つと古さを感じさせてしまうこともあるかもしれませんが、5周年を迎えた今が一番良い店になっていると思いますし、これからもっと素敵な場所になるよう頑張っていきたいです。

morceau 2F/カジュアルフレンチ/TEL.03-6550-8761

注目の女性シェフ、秋元さくら氏の人気店「モルソー」が2018年に目黒より完全移転。繊細で美しい料理とアットホームで居心地の良い雰囲気はそのままに、こだわり抜いた旬の食材で四季折々の美味しさを。

Special Interview 02 そばがみ 店主

――新しい出会いのある場所をつくる

私はこれまで従来の日本料理ではできない表現や味を楽しんでもらうことを目指して料理をつくり続けてきました。東京ミッドタウン日比谷への出店の話をいただいた時は、まだ私達の店を知らないお客様に出会える場所をつくることや、さらに進化した日本料理と蕎麦を味わってもらえることへの挑戦の気持ちを持っていました。同時期に、料理人仲間との交流の中で生まれた「からすみ蕎麦」はその一つで、この味を楽しみにお越しいただくお客様はとても多いです。また、料理やお酒だけでなく、お客様とのコミュニケーションもとても大事にしています。東京ミッドタウン日比谷には、仕事仲間や家族連れ、お一人で立ち寄る方など様々なお客様がいて、その方の気持ちを汲み取った細やかな接客や会話など、ちょっとしたことの積み重ねが、愛される店づくりにつながるという思いで取り組んでいます。私達料理人が調理に一生懸命に向き合う一方で、この店の運営の大きな部分を担っている女将をはじめ、従業員全員のがんばりがあって、飲食店全体が苦しい世情の中でも今日まで続けることができ、皆にとても感謝しています。

――日比谷という街と共に名残のある店に

日比谷や有楽町、銀座は、プライベートでもよく訪れる街で、車に乗って向かう時に東京ミッドタウン日比谷の姿が見えてくると、いつも格好良いなと思います。一般的な商業ビルやオフィスビルと違って、曲線的な部分や独特な形は、どこから見ても絵になるもので、そのビルに店を構えていることは幸せですね。日比谷の街の上品な雰囲気を、街を歩く人々も楽しんでいて、お客様も特別な気持ちでお越しいただいているのを感じます。その気分を盛り上げる料理やサービスに感動したお客様が、友人や家族を連れてきたり、また別のお客様にご紹介いただいたりと、日比谷での“そばがみの輪”がこの5年で育まれてきているのを実感しています。訪れたお客様に「行って良かったね」「また来たい」と感じていただけるような名残のある店として、これからも長く続けていきたいですね。

そばがみ 3F/蕎麦・日本料理/TEL.03-6812-7123

本格的な和食が味わえる蕎麦処。日本酒・ワインも豊富、美味しい肴に、こだわりの手打ち蕎麦を「日本料理・神谷」直伝の職人技で堪能できる。 お席はカウンター・テーブル・個室もあり、お祝いやビジネスのご会食にも。

Special Interview 03 HIBIYA CENTRAL MARKET 株式会社有隣堂 代表取締役社長

――これからのライフスタイルに寄り添う場所

HIBIYA CENTRAL MARKETを運営する有隣堂は創業113年を迎えた歴史のある書店ですが、近年の社会のデジタル化や人々のライフスタイルの変化と共に、これからの書店としての在り方を模索するべき時期にきていると感じます。この場所に出店することになった5年前は、その課題が色濃くなってきた時期で、新しい有隣堂のカタチをつくるためのチャレンジでもありました。日比谷は、歴史や伝統がある一方で、日々新しい文化や人の流れが生まれる街でもあります。その雰囲気から着想を得て、書店だけでなく居酒屋やコーヒースタンド、物販店、理容室が一体になった新しい出会いがある場所としてHIBIYA CENTRAL MARKETは生まれました。基本的にスタッフは有隣堂の社員であるため、初めは新しい業態に戸惑っていましたが、経験を積む中で、この場所ならではのお客様とのコミュニケーションやサービスが生まれてきています。コーヒーカウンターでスタッフが常連さんと立ち話をする様子や、理容室でさっぱりしてから居酒屋に立ち寄るお客様、書棚の間やギャラリーを散歩するように過ごすお客様の姿などを見ていると、書店を軸にしながらそこから広がる新しい風景に出会えたと感じます。

――日比谷の新しいコミュニティを育む

私も個人的に東京ミッドタウン日比谷を訪れて、他のお店で食事をする機会があるのですが、どのお店もオリジナリティがあり、素晴らしいサービスを提供されていて、それらが交ざりあったこの商業ビル独特の雰囲気の中に、私達の店舗があることは嬉しいです。また、上階のオフィスワーカーや家族連れ、お友達同士、ふらっと一人飲みを楽しまれるお客様など、様々な方が過ごされているのを目にする中で、ただ商売としての利益を追求するのではない、コミュニティを生み出すことの大切さを改めて感じています。日比谷という街は、日々変化し進化していますが、それを支えているのは、そこにいる人々であり、そのコミュニティです。そして、コミュニティを育むための場所をつくることが、お店づくりとも言えるのではないでしょうか。私は、時代が移ろう中でも本と書店の持つ力を信じています。日比谷に魅力的なコミュニティを生み出し、新しい文化を発信していく東京ミッドタウン日比谷と共に、私達も新しい時代に向けて進んでいきたいですね。

HIBIYA CENTRAL MARKET 3F/ライフスタイル/TEL.03-6205-7894

食事や酒、本や衣服などが揃えられ、誰もが郷愁や親近感を抱き、居場所を見つけられる場所。食事をしたり、買い物をしたり、ただ行き交う人を眺めているだけでも良い。見知らぬ土地の市場や路地裏、幼いころの商店街、目に映るものすべてにワクワクする場所。

TOKYO MIDTOWN HIBIYA 5TH ANNIVERSARY